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山菜特集
野の香り、独特の苦さと歯ざわり。春から夏、山菜ファンは落ち着きません。「山形県の山菜宿で名高い月山タケノコがどっさり出るよ」と聞いて一路、東北新幹線とバスを乗り継いで月山山麓へ。高速道路の出口からさらに車で10分山に入るという山奥の「清水屋旅館」に行ってきました。
10軒ほど並ぶスキー宿のひとつのその玄関でまんずびっくり。無造作に置かれた年代モノの帆布のザック、その口から根曲がり竹のタケノコがあふれています。「今朝、オトサンが採ってきた分。20キロくらいかねえ」と、おかみさん。ピカピカツヤツヤ。これぞ、ブランド、月山タケノコ。と、そこへ筋骨隆々のご亭主登場。「50キロくらいは採りたいもんだけど、最近、大勢が採るからねえ」。なんだかハナから迫力満点になってきました。 「タケノコは長く置くと味、変わるから」と、すぐ始末にかかる由。この際、見学です。どっこいしょと、お客のいない食堂の床にまずはこの家のおばあちゃん(78)登場。おかみさんと孫娘も並んで、まずはおばあちゃんが包丁で穂先を斜めに削ぎ切ります。ちゃちゃっと早い早い。おかみさん、孫娘がすばやく皮をむく女三代の流れ作業となりました。 仕事しながらのおばあちゃんの昔話が面白い。「ここを開業してもう30年近い」「それまでは炭焼きと猟の暮らし」「嫁に来た当時、おじいちゃんが単発銃で獲ってきたウサギの皮は1枚30円。肉は70円。たまにテンがとれると7000円。モチをついて山の神様にお礼したもんだ」「昭和48年の大雪は軒先で9m30cmもあった」「タケノコ、昔は13貫目(49キロ)しょったもんだ」って、もう生きた民俗学ですね。 この日の食膳の豪華なこと。まずはタケノコごはん。タケノコの味噌汁。焼きタケノコ。木の芽(アケビの若芽)、独活、クワガラ(ヨブスマソウ)のおひたし、ウルイの酢の物、独活とニシンの煮つけ、コゴミの胡麻和え、各種山菜のてんぷら、イワナの塩焼き・・・・ほか。ご亭主や若夫婦が採る各種山菜を、おばあちゃん以下母娘三代が処理して保存して調理する。代々続く見事な連携プレーの賜物をたんのうしました。 翌朝、ご亭主から「採集に出るけど見る?」と誘われ、プロの技拝見に同行決意。長袖シャツに、おかみさんから長靴を借り首にはタオル、軍手必携。軽自動車で20分ほどの地点で車を捨て沢に下りれば、あちこちに雪渓が残り、雪に埋もれていた木々が天に向かって立ち上がろうとしています。ブナの若葉が萌え、足元にはフキノトウにショウジョウバカマ、カタクリの花。長靴で軽々と雪面を登ります。遠ざかる姿は急斜面の枝をつかんでまるで軽業師。やぶの間を見え隠れしながら山腹を大きく巡り、その間にも屈んではなにかを摘み、何かを掘り。雪の上に広げて分類整理すれば、コゴミやウルイがつやつや。「昔は縄張りが決まってましてな。私も親父に教えられて足を乗せる石まで覚えましたが、最近は素人さんや他所の業者も入ってくるからねえ」とため息が出ます。 若夫婦にも伝授するんですか?と聞いたら、面白い話が聞けました。婿どのも山仕事を覚えつつありますが、先日、切羽詰った声で現場から妻に電話あり。なにしろお父さんは猟友会の現役で時には熊撃ちにも出ると言うパートタイム・マタギですからね。娘の電話を受けた岳父どの、すぐに婿どのに電話して「目をそらすな。そのままあとずさりしろ」とご教授。婿どのは事なきをえましたが、「ついでにケイタイでクマの正面写真撮った」というのです! 春から夏は山菜採り。料理目当ての団体客も多く、一家は手が抜けないと言います。山菜だけでなく、山の家族の充実した日々を味わわせてもらったことでした。 |